仲田修子;ダウンタウンブルース 1
編集者より これからお届けするのは仲田修子のオリジナル小説「ダウンタウンブルース」です これは昨年の11月の初めから約一ヶ月にわたって連載されていたものです この小説は彼女が20代の頃実際に経験したことを元に書かれたほぼ実話のお話です 色々なものが混沌としてまだパワーがみなぎっていた当時の日本の東京の片隅で繰り広げられていたドラマ 今回ご好評だったこの作品を再々上演させていただきます それでは...
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続き 8)ガルボ爺さん;アコギ1本のソロ 僕が大好きだった白人のカントリーギタリスト「マール・トラビス」のスタイルで弾いてる 彼はギタリストとしてもすごいのだがソングライターとしての才能も凄くて「16トン」という日本でも昔流行った曲も彼の作品だ 9)旧い友;僕ももう60年以上生きてきて色々な友人と出会ったり別れたりしてきたが、亡くなってしまったり会いたいけどどこに居るか所在がつかめない者も多い...
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私は中学の時、わりと成績が良かった。 ある日、友達の一人から、中学の時の同級生だった女の子が、アメリカのどこかの大学に留学したというのを聞いた。儲かっている寺の娘で、成績は中の下位のコだった。 私はその晩酒屋に行き、安い焼酎とタバコを買った。焼酎はびっくりする程まずく、仕方ないので水で薄めて、砂糖を入れて、それでも飲んだ。だんだん気持ちが悪くなってきて、おまけに目まいまでしてきた。...
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続き 15)飛ばすぜこの道;アコギ×2、ベース、ドブロ使用 リードに使ったアコギは今は人手に渡った「STAFFORD」を「「デュガン(Dugain )」のジプシーギター用ピックで弾いてる この曲はジプシージャズにドブロを使うというあまり聞いた事のないことをやってみたかったから この頃はキターもドブロも弾けてたんだなあ~・・・今はできないかも知れない(笑) 16)24sekki;アコギとドブロ...
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しかし、一体どうやればなれるのだろう?まず私は今でいうところのサラ金というのに初めて行ってみた。そこで三万円借り、工場を辞めた。 パン屋の赤電話から電話帳を見ながら色々なところへ手あたり次第電話してみた。 まず芸能プロダクション関係。どこも誰も相手にしてくれなかった。話を聞いてくれる人さえもほとんどいなかった。次に有名な企業。 「失礼ですが、どなたに御用ですか?」...
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今日で最終 22)晴れるや;アコギ、エレキ、ベース ちょっと「ゴスペル」スタイルっぽい曲をやりたかったので ゴスペルにはブルースに近いスタイルのものやカントリーに近いものなどがありこれはその後者 後にゴスペルハ「ソウルミュージック」と深くつながってゆく 23)海岸線を行けば;アコギ、エレキ、ベース、ドラムはレコーダー内臓のリズムマシンだ...
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二ケ月目に入って二週間位した頃、新しく店にきだした大学生に耳よりな話を聞いた。 「俺の先輩が広告代理店で働いているんだけど」 「紹介して下さい、お願いですから」私はさっそくその先輩という人に、今でいうアポをとった。 その学生の先輩という人はまだ若そうで、気さくな人だった。私の話をけっこう真面目に聞いてくれた。...
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オーディションの日、私は口紅を塗り、アイシャドウをつけた。化粧はそれだけだった。そして念のため、とんでもないミニ、を履いた、当時の女の子にしては背の高い私は、顔は十人並、そして脚は抜群という評価がわかっていたからだ。 オーディションは行われた…。男の人三人と女の人一人が聞いてくれた。私はジャズスタンダードの「サマータイム」から歌い出した…次にシャンソンの「ろくでなし」、その後二曲歌った。...
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最初の日から、私はとにかく声が良い、と言われた、自分でもそうかもしれない、と思った、その店は高級な音響機材とマイクを使っていた。東中野のそれがいかにひどいマイクセットだったのかという事もわかった。 ドイツ製の高いマイクで歌うせいか、私の「声」はものすごく評判が良かった。澄んだ高音から低い地声まで、自由自在に出せるような気がした。 「君の声は、ドラマティックソプラノというのだろうね」...
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ある晩、彼女は何を思ったのか、私達が「ドンカマ」と呼んでいるリズムマシーンを物すごい早さの8(エイト)ビートにして、バッハの何声…何声だったのかは忘れてしまったが、とにかく難しそうなクラシックを8(エイト)ビートに乗せて弾きまくった事があった。店中総立ちになった、ブラボー!の声が湧き起った。...
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それから二ケ月後、私達一家は引っ越した。 西武池袋線の富士見台という駅、徒歩三分にある小さな一軒家だった。六畳、四畳半、DK、それに古い家だけれど、何と、お風呂まで付いていた。私は生まれて初めてお風呂のある家に住める事になったのだ。家賃は月三万円…充分払える額だ。...
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私の「詐欺師神経症」はレパートリイが増えるのに正比例してひどくなっていった。若いお客の中には学生時代バンドをやっていたという人もいた。そういう人の中で性格の悪そうな奴は、わざわざ私の歌っている隣までやってきて、私の歌っている真っ最中、大きな声で、「あっ!二拍吐いた、あっ!食った、デタラメ歌ってるよこいつ、良く金取れるよね、こんなヒドイ歌でさ、最近の女は図々しいっていうけど、ここまでっていうのはめずら...
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「かけもち」、というのは二軒の店を三十分毎に往復して稼ぐ事で、ナイト、というのはそれが終ってから、夜明け近くまでやっている店で夜中から音出しをして四ステージ歌う事だった。 「星さんは一ケ月どのぐらいギャラもらってるんですか?」 私は訊ねた。 「うん、今月はかけもちとナイトをやってるから、四十五万位かな…」 「ヒエー!すごいですね、そうすると一軒十五万位貰えるんですか?」 「うん、大体そのくらいだね」...
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仕事は楽で、むしろたのしかった、お客はみんな素朴そうな人達で、私の歌で本当に楽しそうに踊り、私のギターで次々に歌った。その店で、初めて私は前にいた銀座の店が、いかに、色々な意味でものすごいテンションの高い所だったのか、つくづく思い知らされた、前の店ではまずお客が、オーナーが、マネージャーが、バーテンダーまでもが私の歌を批判し、批評し続けていた。...
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その店は錦糸町の、クラブとか何とかサロンとか飲み屋とかが何軒もかたまってある一画の中にあった。地下一階で、二十坪程の広さだっただろうか?内装は古ぼけて、ソファはところどころ擦り切れ、何だか店全体が疲れ果てている…そんな感じがした。...
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「あなた、ピアノか何か習っているの?」私は訊ねた。絶対何か習っているに違いなかった。 「いいえ、ピアノじゃなくて歌を習ってるんです」 「どの位習っているの?」 「私、歌手になりたくて、高校出てすぐに東京に来たんです、それからずっと、いろんな先生についたんですけど、今習ってる先生がレコード会社にすごく顔のきく人で、もうちょっと頑張れば、その先生の作曲で、有名な作詞家の人に詞をつけてもらえるんです」...
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ミツコは一応雪乃派に所属しているらしかった。けれど彼女一人は他のホステスとは違って、絵理菜派に対して別に何の悪意も持ってはいないようだった。 そんなある日、お客がけっこう入っている時だった、絵理菜さんがふと思いついたようにマイクを握った。 「先生、一曲歌わしてよ…」...
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翌日店へ行くと、彼女達は相変らず熱心に対立していた、私はカウンターでマネージャーにそっと訊ねた。 「あの人たち、一体何で、何が原因であんなに仲が悪いんですか?」 「それが、僕にもさっぱり解らないんだよ。ただ、ずい分前からずっとああだけどね、まあ、お客が入ってくればふつうにしててくれるから」 私は絵理菜さんに声をかけた。...
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「絵理菜さん…ギターとか弾く気ありませんか?私で良かったら毎日早い時間に教えますけど…むろんタダでいいですけど」 「別にいいよ、そんな、あたし面倒なことキライなんだよ」...
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